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第7話 春一番の香り。

2018/04/03

中央軒煎餅の別ブランド「江戸屋宗餅」が和生菓子をつくっていた頃、
春の主役はなんといっても春を告げる“桜餅”だった。
桜餅…皆さんは、道明寺派?長明寺派?
私の印象では、関西風の道明寺の桜餅はもち米のモチモチした食感を楽しめて、
中の餡と一体化している美味しさがたまらない。
それに対して、関東風の長明寺の桜餅はあっさりとした小麦粉の皮で包まれているため、
ひときわ餡の甘味と桜葉の香りが引き立つ。

私たちは、もち米で作る道明寺風の2種の桜餅に挑戦した。
蒸篭(セイロ)で蒸かしたもち米を、胴づきと呼ばれる杵でほどよくつぶす。
1種はピンク色の桜餡で生地を包み、串に刺した“串玉さくら餡”。
もう1種は、こし餡をもち生地で包んで、桜葉でくるみ、さらに桜の花を添えた“ひと口桜餅”。

桜餅はピンクの春色がとても可愛らしいが、なんといっても桜葉の芳醇な香りが魅力だ。
当時使用していた桜葉は、静岡県松崎町のオオシマザクラの葉。
一枚一枚丁寧に手摘みされ、大きさを揃えて50枚ごとに束ねられる。
大きな杉樽で約半年間かけて塩漬けされることで、
青々としていた桜の葉はべっ甲色に変わり、あの豊かな香りが漂うようになる。

「あられの“桜の木”」(前号・第6話)の桜餅せんべいを食べていると、煎餅ということを忘れるときがある。
やさしく広がる桜葉の香りが、桜餅を食べているような気にさえさせてくれる。
まさしく、春一番のあられだ。