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第2話  霜柱と出会ったら、今日は大吉! 

2017/05/30

大きなおかきを割ったとき、その断面をじーっと眺めてみる。
おかきの中に潜んでいる、霜柱を見つめるために。

幼い頃、学校に行く途中で霜柱を見つけると、思わずかけ寄った。
片足をそっと霜柱の上に乗せて、スローモーションのようにゆっくりと体重をかけてみる。
「ざくっ」というあの音を確かめたくて。
次は、行進の一場面のように、全身に力を入れて足を高く上げて、「ざくっ、ざくっ」と力強く。
足裏から全身に広がる何とも言えない快感な響き。
誰もが走り寄って試してみたくなる、冬の朝の足音。

あの心地よい感覚を、わたしたちはおかきの中に見つけた。
おかきが口の中で「ざくっ、ざくっ」と崩れていく音は、
霜柱の足音に似ている。

おかきの生地は熱を加えると、中の水分が水蒸気に変わり、
内側から、もの凄いチカラで生地を押し広げるようにして膨らませる。
まさに、お餅を網の上で焼いたときの、あの光景。

水蒸気のチカラが強すぎて、お餅が “プシュー”と破裂しないように、
目利きのおかき職人は100℃の水蒸気のチカラに負けない、頑丈なモチ生地をつくる。

「せんべい」と「おかき」実は、同じものではない。
原材料も、生地づくりも違う。
「せんべい」は、日常食べている“うるち米”を細かく挽いて 水と熱を加えながら練る。
この時の米の挽き方が食感の決め手の一つとなる。細かければ軽い食感になるし、粗ければ
歯ごたえのある堅焼きに仕上がる。

それに対して「おかき」はおこわや赤飯に使う、粘りの強い“もち米”を使い、丸粒のまま一晩水に浸し、
翌日、もち米を蒸かした後、練りあげる。水蒸気の力に負けない“もっちもっち”の
よく伸びる頑丈な生地に変身する。

大きなおかきに求める食感は「さくさく」でもなく、「ざくざく」でもない。
そう!霜柱の「ざくっ、ざくっ」がいい。
なぜならば、「さくさく」では軽すぎて “歯ごたえ”が物足りず、
「ざくざく」では口の中でこぼれていく “歯こぼれの余韻”が感じられないからだ。
表面は少ししまっていて、中はちょっと粗めだけど 「ざくっ、ざくっ」 と心地よくこぼれていく食感。
その細かな違いにこだわり、霜柱のような心地よい響きを求めて、
自由奔放なモチを相手に、おかき職人は至難の技に挑戦し続けていく!