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第4話 おかきはLovely!

2017/11/10

寝ても覚めてもおかき。

ここはどこだろう。
どうやら、懐かしの昔の自社工場のようだ。
粉だらけの“木枠”(モチを固めるための型)が高く積みあげられている。

鳳月(ほうげつ)のモチ取りの真っ只中。

モクモクと立ち込める蒸気の中から、“みやこがねもち” が見えてきた。
小さな工場は、幸せな炊きたてのごはんの香りに包まれた。

熱々の蒸しあがったもち米を手でつまんで口に運ぶ。
少し硬めだが、芯まで蒸けている。
ひと口、ふた口、噛みしめると米の香りと、ほのかな甘みがふわっと口中に広がる。

気づくと “みやこがねもち” はすでに練りあがり、キメの細かい色白のモチに変身していた。
慌ててモチを口に入れた。今度はすぐに、お米の香りと甘みが広がった。
粘りもコシもいい!

慣れた手さばきで、モチを次々と木製の型 “木枠” に入れていく職人の姿があった。
あれ?それは、現工場からタイムスリップしてきた若手のおかき職人だった。
無駄が全くない、惚れ惚れする動きだ。

モチの水分を、木がジワジワと吸い取ってくれる。
モチの表面が少し硬まった頃、木枠から取り出して
“鳳月型” と呼ばれるステンレス製の筒状の型に移し始めた。
蓋をして、型ごとトントンと地面を叩いて、隙間ができないように整えていた。

すると突然、若手職人がこちらを睨んでこう言った。
「なに突っ立ているんですか?早く、冷蔵庫に運んでくださいよ!」
えっ!私がやるの? 1本5キロ以上もある型を冷蔵庫まで?これ全部を?
なんで今日はこんなに鳳月の生産量が多いの?

釈然としない、なんで私が叱られた?

はっ、これは夢だ!わかった瞬間、さっきまでの “もやもや” した気持ちは消え、
しばらく余韻に浸っていたいような “幸せ” に変わった。
昨夜、寝る前におかきの “なま生地” を眺めていた。
なんて綺麗な自然ヒビ!
きっと、焼きあがりは花が開いたような美人顔になるだろうな。

30年前には、自社の商品カタログの表紙を飾っていた通称、鳳月。
大きくて丸くて、ざくっざくっの心地よい食感が特徴的。
今は桐乃坂中央軒 “米の幸” に進化して、新しい看板を張っている。

中央軒煎餅の歴史とともに、代々頑張ってきたね。
30年後には、さらなる進化を遂げているのかな?
そんなことを考えているうちに、眠りについた。
だから、幸せのあの場所に連れていってくれたのか・・・。
せっかくなので、夢の中では途中になってしまった “おかきづくりの続き” にふれておこう。
鳳月型に入れた生地は冷蔵庫で3泊4日寝かせて、モチが完全に硬くなったら型から取り出し、切断する。
その後、さらに3日間かけて、満遍なく生地の水分を飛ばして、中心部までしっかりと乾かす。
すると、ようやく “顔” が見えてくる。

深すぎず、浅すぎず、ヒビが入っていればいいけれど。
なんせ、相手は自然である、気ままである。

大きなおかきは、醤油の艶とヒビ割れた個々の “顔” が命。
自然に入ったヒビは、二つとして同じ顔を作らない。
このヒビを眺めるのが楽しい。

なま生地を枠に入れて、ひっくり返しながら丁寧に焼くと、おかきの表面に
lovelyな花が開いてくる。
醤油ダレがのると、さらに花がくっきりと見える。
乾き・焼きが甘いと、“おかきの化粧のり” が悪い。
美味しそうな艶やかな醤油色 Bright  golden  colour に仕あがらない。

   ・lovely appearance  (可愛らしい外観)

・lovely colours    (綺麗な色合い)

・lovely golden colour (明るい金色)

・looks artisanal    (職人技を感じさせる)

iTQi(国際味覚審査機構)に出品した際、ヨーロッパのシェフやソムリエから
“米の幸” の外観について上記のようなコメントをいただいた。

おかきの外観を lovely と表現してくれたことがうれしくて。
この lovely appearance & colours は、10日間かけてようやく表れる。
中央軒煎餅90余年の歴史の中で、今も変わらず “継承” し続けている。
昔ながらの製法によって。

そう!まさしく、世界共通の Looks artisanal な職人ワザなのである。